内閣府は、令和5年度における「企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」についての結果を発表した。2007年度から隔年で実施しているもので前回の令和3年度時点での調査以来となる。それによると、大企業のBCPの策定状況は、策定済みが前回から5.4%伸び76.4%に。策定中は9.2%で、策定済と策定中を合わせた割合は前回とほぼ同じ85.6%となった。中堅企業は、策定済みが45.5%(前回40.2%)、策定中が12.1%で、策定と策定中を足した割合は57.6%となった。

画像を拡大 BCP策定状況

業種別では金融・保険業のBCP策定率が76.6%と最も高くなっている。以下、運輸業・郵便業(66.2%)、建設業(63.4%)と続いた。前回調査と比較すると、運輸業・郵便業のBCP策定率は、前回比17.2ポイント増、建設業は前回比10.6ポイント増、サービス業も14.4ポイント増と上昇を強めた。コロナ禍や各地での地震を受けて、これらの業種の継続が復旧に大きな影響を与えるという意識が強まり、BCP策定を進めていることがうかがえる。

業種別事業継続計画(BCP)策定状況(回答数30社以上で連続性のある業種を表示)

重視しているリスクに関する質問では、全体では「地震」(91.4%)、「感染症(新型インフルエンザ、新型コロナ等)」(66.9%)、「火災・爆発」(53.6%)が上位を占めた。なお、「「感染症(新型インフルエンザ、新型コロナ等)」は、前回調査の81.2%から14.3ポイント減少した。内閣府では、コロナ収束とあわせて低下していると考えられるとしている。

画像を拡大 重視しているリスク

リスクへの対応を実施している企業に対し、リスクへの対応を実施していく上での課題について聞いたところ、全体及び全ての企業規模において「自社従業員への取組の浸透」の割合が高くなっている。これは前回までの調査も同様の傾向となっている。

画像を拡大 リスクへの対応を実施していく上での課題

今回の調査で新たに質問に加えた、事業所の建物の耐震基準については、全体では「新耐震基準」1)が66.6%と最も高く、次いで「新旧耐震基準両方」が21.4%、「旧耐震基準」2)が11.5%となっている。各耐震基準の充足状況に関しては、全ての耐震基準で「充足」(基準を満たしていること)が優位だが、旧耐震基準では「不足」が43.1%と、他の耐震基準と比較して割合が高くなっている。

1)旧耐震基準:1950 年から施行され 1981 年 5 月 31 日まで適用された耐震基準
2)新耐震基準:1981 年に改正された建築基準法の耐震基準

画像を拡大 事務所の建物の耐震基準

また、事業所の設備機器・オフィス機器の転倒防止の実施状況については、全体では「行っている」(56.3%)、「行っていない」(22.8%)、「設備機器のみ行っている」(14.0%)の順となっている。規模別では、全ての規模において「行っている」が高くなっている。特に大企業では「行っている」が72.9%となり、中堅企業(52.5%)とは20ポイント以上、その他企業(53.6%)とも19ポイント以上の差となっている。

画像を拡大 事業所の設備機器・オフィス機器の転倒防止の実施状況

 

(お知らせ:5月7日「リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説」にて詳細を解説します。https://www.risktaisaku.com/articles/-/51198